飲食店経営で失敗しないために知っておくべきM&Aのキホン

      2016/06/08



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随分と昔、あるM&A案件がありました。案件の金額自体は小さいもので、売却側は売買価格として数億円の価格を提示していました。

売却する会社の純資産は簿価ベースではプラスだったのですが、デュー・デリジェンスを実施すると、その会社は債務超過に陥っていることが判明しました。

売り手は、事業の将来性も微妙な債務超過の会社を、数億円で売り付けようとしていたわけです(苦笑)。

因みに、デュー・デリジェンス(以下、DD)とは、調査のことで、法務DDや財務DD、ビジネスDDなどがあります。

さてM&Aは、会社と会社の結婚に例えることができます。

結婚を例に、財務DDを説明するとわかりやすいと思います。

結婚直前に、A男が、フィアンセB子に伝えていない莫大な負債を抱えていたとします。B子が負債を抱えるA男と、何も知らずに結婚してしまえば、B子自らの生活にも影響が出るはずです。

ちなみに、負債を完済しないままA男が亡くなると、B子がその負債を相続します。

そこでB子が、結婚前に、A男の身辺調査をします。この身辺調査が、M&AにおけるDDにあたります。

ただDDの場合は、身辺調査と違って、コソコソと調査するわけではありません。両者合意のうえで、実施します。

実際に、M&Aの際にDDを実施すると不良資産や簿外債務(BSに計上されていない負債)が発見されることが多々あります。

DDで不良資産や簿外債務が見つかると、当初より、純資産額は小さくなります。

財務諸表の見方は、以下の記事がお勧めです。
参考:会計士が教えるビジネスマンのための財務諸表の見方と読み方

買手が何も知らずに、株式譲渡の方法でM&Aを実施すると、莫大な簿外債務までも負担することになりかねません。

さてここで、飲食業のM&Aへと話を勧めます。

飲食店の危ないM&A

飲食店経営を積極展開していくと、他の飲食店を買収したり、または自社が経営している飲食店を売却するということも珍しくありません。

実際に飲食店の経営者には、他の経営者から売却オファーが届くこともあります。

ただ、なかには売手と買手の当事者間だけで事業を売買することを目にすることがありますが、これって、とてもキケンです。

M&Aをする場合、売手の過去のFSを入手して財務DDなどを実施することが通常ですが、なかにはセルサイドが資料を一切提出せず、売手の言い値で、しかも当事者間だけで売買することもあるようです。こういうのは、ありえないくらいキケンだと思います。

また、「○億円で売ってくれませんか」というオファーがあり、売手がその金額に「こんなに高い金額で売れるのか、、、」と満足していても、実はもっと高い金額で売却できることがあります。

当事者間だけでM&Aを実施すると想定外のリスクに晒される可能性が高くなり、また著しく不当な金額で売買される可能性もあります。

さて、こうしたリスクを回避するために、必要最低限知っておくべきポイントを記載してみます。

M&Aアドバイザー

M&Aアドバイザーは、可能な限りM&Aのサポートを依頼すべきだと思います。

M&Aの規模が大きい場合は、アドバイザーは必ず関与しています。

アドバイザーに依頼する一般的なメリットは、M&A全般についてのアドバイスやマネジメント、相手企業との交渉の立会、クロージングの段取りなどをしてもらえるという点にあります。

ただ規模が小さすぎる場合や予算が少ない場合、依頼したくても依頼できないことも実際にあります。仮に依頼するにしても、M&Aのアドバイザーはピンとキリの差が激しすぎるので、依頼する際は注意が必要だと思います。

またアドバイザーの報酬について言うと、報酬は成功報酬のケースが多く、成約しないと報酬が懐に入らないという契約が一般的です。

本来的には、アドバイザーの役割として、ディールキラーなどが発見された場合、M&Aをブレーク(不成立)させることもアドバイザーの仕事の1つだと思いますが、成功報酬という報酬体系がインセンティブとなって、成約させてはいけないものを無理矢理成約させてしまうという悪質な仲介業者もあります。なかには悪質なために会社から出禁された仲介業者もあるようです。この点については興味深いお話がたくさんありますが、Blogには書けません。

バリュエーションの実施

バリュエーション(Val)というのは、簡単に言うと、売却する企業や事業の価値を評価することです。

このバリュエーションで算定された価格が、M&Aにおける売買価格の基礎になります。

バリュエーションで算定された価格が、そのまま売買価格となることは少ないですが、根拠のある評価額になるので、M&Aではこのバリュエーションも必須だと思います。

当事者間だけでM&Aを実施し、しかも売手または買手の言い値で売買価格を決定する実例を稀に耳にすることがありますが、専門家などを交えずにM&Aを実施するのは極力避けた方が良いと思います。

DDやValを外部に依頼するには多少コストがかかりますが、事後的に生じる可能性のある大きなトラブルを回避できることを考えれば、そのコストは高くない。

デュー・デリジェンスの実施

上で記載したようにDDには、法務DDや財務DDなど複数ありますが、必要最低限、財務DDを実施し、簿外債務の有無やその金額などを確認するのは必須だと思います。

簿外債務などを見逃すと、事後的に当事者間でトラブルが発生し、手間・ヒマ・精神的な負担・莫大な出費が発生しかねません。M&Aで財務DDは必須でしょう。

財務DDを実施せずに、M&A後、巨額の簿外債務が見つかれば、口から心臓が飛び出ると思います。

法務DDでは、売手が過去に業者などと交わした契約書のレビュー、法務リスクの分析など実施します。特に重点的にチェックするのは、COC(チェンジオブコントロール)条項や競業禁止など。

そしてDDの結果、ディールキラー(※)が発見されればブレークする可能性が高くなります。

※ M&A実行の妨げになる重大な法令違反や関係者が反社会的勢力の場合など

この法務DDも可能な限り実施することをお勧めします。

DDは対象会社に潜むリスクを事前に把握し、事後的なトラブルや大きな損失を回避させる目的がるので、多少コストはかかりますが、保険として実施しておくべきだと思います。事後的にトラブルが発生した場合のコストや損失に比べれば安あがりです。

最後に

他にも細かい注意ポイントなどたくさんありますが、今回はM&Aで必要最低限知って置いて欲しいことを記載しました。

最後に、M&A全体の流れを下に示します。

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当事者間だけでM&Aをするのはキケン極まりありません。初心者だけでエベレストにアタックすることと同じくらいリスクがあります。

したがってM&Aについては、弁護士や会計士等の専門家にサポートを依頼することをお勧めします。

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